ゲームに熱中する心理的仕掛けとゲーミフィケーション

ゲームには没入感を高めるための心理的仕掛けがあります。
その心理的仕掛けを他分野に応用する「ゲーミフィケーション」と呼ばれる手法が、現在注目を浴びています。
今回の記事では、心理的仕掛けとゲーミフィケーションについて、概要を簡単に書きたいと思います。

【没入感を高める心理的仕掛け】

ゲームに仕込まれている心理的仕掛けには色々なものがありますが、主軸となっているのは「世界観」と「正の強化」の2つです。
出来の良いタイトルであれば、この2つの心理的仕掛けは必ずと言って良いほど仕込まれています。

・世界観

ゲームの内部で行われている処理は、あくまでも論理的な演算(ゲームシステム)です。
この論理的な演算を売りにしても、一般的な人々にとってはとっつきにくく、興味を持ってもらません。
そこで、「近未来のSF」「剣と魔法のファンタジー」といった魅力的な世界観でカバーすることで、一般的な人々に興味を持ってもらえるようにしています。

・正の強化

「正の強化」とは行動主義心理学の用語であり、ある行動をした結果として快の感情を受けることで、その行動を増加させるというものです。
ゲームからは、「前の敵より少しだけ強い敵」「ちょうど良いレベルの対戦相手」といった、少し頑張れば乗り越えられる、ちょうど良い高さのハードルが適切なタイミングで提示されます。
このハードルを乗り越えることで達成感という快の感情を得ることができ、次のハードルを探して再びゲームを手に取るようになります。
最終的には、達成感を得るために、ゲームをプレイする時間を意識的に捻出するようになります。

【ゲーミフィケーション】

ゲーミフィケーションとは、ゲームの心理的仕掛けを日常生活に応用することであり、教育成果を高めたり顧客満足度を高めたりする上で有効とされている手法です。
もちろん、ゲームとしてプロダクトを作成することでこのメリットをわかりやすく享受することができます。
しかし、そこまでしなくとも、ゲームの心理的仕掛けを応用することで、例えば以下のようなメリットを享受することに期待できます。

・世界観

無味乾燥に思える行動について、人々が興味を持つような世界観でカバーすることで、積極的にその行動を行ってもらうことができます。
例えば、一般的な高校の理系科目の教育では数学的な概念が前面に押し出されていることが多く、一般的な人々が興味を持つような内容になっているかは疑わしいです。
しかし、ロボットを動かす、人々の経済活動を調べる、新素材を開発する、といった具体的な活動については、一般的な人々にも興味を持ってもらいやすいと考えられます。
そして、これらの活動に高校数学が応用されているということを知れば、理系科目に興味を持ってもらいやすくなります。

・正の強化

ゲームではちょうど良い高さのハードルを受動的に与え続けられますが、日常生活ではこのハードルを自分で探さなければならなりません。
高すぎるハードルを設定してしまうと達成感を得ることができず、やがて挫折してしまいます。
最終的なハードルを設定した後に、少しの努力で達成可能なハードルを細かく設定することが肝要です。
例えば、試験に合格したい場合、いきなり「模試で○○点以上を取る」という高いハードルを設定してしまうと、それを達成できなかった時に挫折してしまいますし、達成できない確率も高くなってしまいます。
しかし、「参考書を1日10ページ以上読む」という低めのハードルであれば、挫折せずに長く続けることができますし、無理をしない範囲でそのハードルを超えること(例えば参考書を10ページを超えてキリが良い所まで読む)を達成することも多いですし、努力を継続できることで最終的には試験に合格するだけの力を蓄積できる可能性が高くなります。


いかがでしたでしょうか。

情報分野の技術はプロダクトを実装する上で重要ですが、より上位のレイヤー、例えば要求定義・要件定義や組織運営といったレイヤーでは、人と人の繋がりを考えることが重要になります。
知識面で言うと、戦略や心理学といった分野の知識が重要になりますし、IT分野の人材の質を高めるために設けられている情報処理技術者試験でもその分野の知識が問われることがあります。

今回執筆した「ゲーミフィケーション」は、有力なプロダクトを作成したり、教育効果を高めたりする上で、有用な知識であり、知っておいて損はないと思います。

これからは、戦略や心理学といった分野の知識についても、IT業界との関わりが深いものであれば書いていきたいと思います!

「見積もり概論」社内勉強会用のパワポの公開

社内勉強会向けに、見積もりについて説明するパワポを作成したため、公開します!
見積もり概論

見積もりの必要性・手法・経験則について、簡単に説明しています。

詳細設計以降の作業の見積もりを行う場合は、見積もり手法と言うよりは、技術力の方が重要になります。
しかし、それ以前の工程の時点で見積もりを行う場合、具体的なものが見える前に見積もらなければならないという難しさがあり、見積もりがブレた場合の影響も大きいので、このパワポで解説するような知見が重要な意味を持ってきます。

上流工程を担うようになった場合に役に立つ知見なので、それまで頭の片隅に置いていただければと思います。

IT業界におけるメンタルヘルス対策

IT業界は、メンタルヘルス不調が出やすい業界であると言われます。
メンタルヘルス不調者が出てしまうと事業に悪影響がありますし、何より心情的に心が痛むものがあります。

この記事では、IT業界の特殊な背景と、IT業界でのメンタルヘルス対策について、簡単に書いていきたいと思います。
デリケートな話題ですので、読者のメンタルヘルスを悪化させる可能性がある内容は極力控え、客観的な記述を心がけます。

1.IT業界でのメンタルヘルス不調の多さ

2020年に「過去1年間におけるメンタルヘルス不調による連続1か月以上の休業をした労働者及び退職者割合」という政府統計が取られました。
この統計によると、1年間でメンタルヘルス不調により1か月以上休業する社員の割合が、インターネット附随サービス業は1.5%、通信業は1.1%、情報サービス業は0.9%であるとされています。100人いれば1人はメンタルヘルス不調により長期休暇を取っているという計算です。
(職場によってはこれより高いこともありますし、長期休暇を取らないまでもメンタルヘルスが不調のまま踏ん張っている社員がいることも予想されます)
これは全業界で1位・2位・3位であり、平均の0.4%と比べるとその高さがわかると思います。

2.IT業界にメンタルヘルス不調が多い理由

IT業界に限らず、一般的に「仕事の責任が重くプレッシャーを感じる」「仕事の裁量が少なく自分の仕事を自分でコントロールできない」といった環境では、メンタルヘルス不調が発生しやすくなります。
勿論、各種ハラスメントが横行している職場の場合は、それはメンタルヘルス不調を引き起こす主因になります。
そして、IT業界特有の理由としては、以下のようなものが考えられます。

■不規則な勤務が多い仕事である

IT業界では、長時間残業や深夜作業・休日作業を余儀なくされることがあります。
開発では納期前に「デスマーチ」と呼ばれる追い込みを強いられることがあります。
36協定が遵守されていたとしても、1ヶ月100時間弱の長時間残業を強いられる可能性があります。
また、保守・運用では、システムの都合に合わせた勤務が必要になることがあります。
システムがサービス時間外となる時間帯でないとできない作業があるためです。
そのため、深夜作業や休日作業が必要になることがあります。
更に、緊急のシステム障害の場合は、そのような勤務が予定外で発生します。
このような過大で不規則な勤務は、プライベートの充実や睡眠時間の確保を難しくさせます。
当然、メンタルヘルス不調を抱えるリスクは高まります。

■孤独感を感じやすい仕事である

IT業界はPCの前に座っていることが多い仕事であり、直接会話する機会は少ないです。
また、IT業界に多い客先常駐という形態は、孤独感を強める要素になり得ます。
客先常駐では自社の社員が居ない・少ないという環境で仕事をするため、良く知っている人とのつながりを感じながら仕事をするという形にはなりにくいです。
コロナ禍でIT業界に浸透したテレワークも、孤独感を強める要素になり得ます。テレワークでは非公式のコミュニケーションが発生しにくいため、人となりを知りにくくなったり、どう思われているのかわかりにくくなったりします。
人との繋がりを感じにくく孤独感があるというのは、メンタルヘルスにマイナスです。

■褒められることが少ない仕事である

特に保守・運用に言えることですが、この仕事は縁の下の力持ちな面があります。
また、システムは動いて当たり前と思われやすいです。
そのため、システム稼働を維持していたとしても、褒められることは少ないです。
逆に、システム障害を発生させてしまうと叱責されてしまいます。
このように、仕事の中で自己肯定感を感じることが少ないので、メンタルに厳しい仕事と言えます。

■変化が激しい業界である

IT業界で使われる技術は変化が早く、次々と新しい技術が生まれます。
また、若年者は知識の習得が早い上、教育機関で新技術を学んでくることもあります。
そのため、現場で最前線に立ち続けるには勉強の継続が欠かせません。
このことは余暇の時間を減らすことになりますし、プレッシャーにも悩まされます。
なお、これはIT業界に限りませんが、出世やステップアップにより、現場仕事から管理側の仕事へ移行することもあります。
この場合は、技術の変化に悩まされることは少なくなりますが、仕事内容が変わることで、人によってはやりがいを失うことがあります。

■メンタルヘルス不調を抱えやすい社員が多い

IT業界の技術者には、高い論理的思考力が求められます。
また、ある種の発達障害者は論理的思考力が比較的高いとされています。
そのため、発達障害者にお勧めの職業として技術者が挙げられることが多いです。
(実際、従事者も比較的多いと思います)
しかし、発達障害者は人とのコミュニケーションに難を抱えることが多いため、メンタルヘルス不調を併発することが少なくありません。
コミュニケーションが少ないIT業界といえども、チームワークは必要であり、職場に発達障害への理解が無い場合は、メンタルヘルス上リスクとなります。
発達障害者ではないとしても、仕事内容によっては、メンタルヘルス上のリスクが高い性格を持つ人物が求められます。
コンピューターを動かす上では論理性が求められ、曖昧さは許されないため、完璧主義な性格が求められる面が出てきます。
しかし、この完璧主義は、メンタルヘルス不調のリスクが高い性格でもあります。

3.メンタルヘルス不調の影響

メンタルヘルス不調になった社員は、パフォーマンスが悪くなります。
そして、最終的には休職や退職をせざるを得ない状態になります。
(休職・退職があまりにも多い場合、悪評が立ち採用活動が困難になることがあり、最悪の場合は健康被害のために訴訟に発展することもあります)

具体的には、メンタルヘルス不調になった社員には以下の症状が発生します。

■前兆となる症状

  • 勤怠が乱れ始める(遅刻や突休をするようになる)
  • 声のトーンが暗くなる、ネガティブな発言が増える等、明らかに元気がなくなる
  • 頭痛が増える、風邪を引きやすくなる等、体調不良が増える

■IT業界で良く目にする病名

メンタルヘルス不調の病院での診断名は以下の通りです。

なお、メンタルヘルス不調の症状により通常の就労が困難になった場合、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けるケースもあります。
日常生活を自力で送れるが就労が困難、という程度の場合は、精神障害2~3級となります。

■メンタルヘルス不調の治療と経過

メンタルヘルス不調を病院で治療する場合、治療で即効性が高いのは投薬です。
しかし、投薬治療には副作用もあり、眠気といった仕事のパフォーマンスを落とす副作業もあります。
また、病院から診断書をもらい休職を余儀なくされるような強い症状が現れた場合、休職期間を終えて復帰しても再び休職してしまう可能性が少なくありません。復帰を急ぐ場合は特にその傾向が強くなります。
仕事の中で強いストレスを感じる経験をしてしまっており、仕事をする中でその経験が想起されるので、周囲の理解とサポートがなければ復帰は難しいものになります。

4.メンタルヘルス不調の対策

一般的に、メンタルヘルス不調への対策は以下のようなものになります。

■セルフケアの推進

研修を通して、各々の社員に以下の知識を身につけさせることで、メンタルケアを各々の社員自身で行うことができるようにし、メンタルヘルス不調の減少に期待できます。
研修で伝える内容は、厚生労働省や医療機関等の信頼できる機関が発信する情報に準ずることが望ましいです。

  • ストレスやメンタルヘルスに関する正しい知識
  • ストレスマネジメントやメンタルケアの方法

■職場でのメンタルヘルス対策の実施

メンタルヘルス不調を招くような要素を取り除いたり緩和したりする対策を職場で行うことも重要です。
例えば、深夜の労働時間が長くなりすぎないように勤務時間をシフトするのは良い対策です。
ただし、良かれと思った対策に効果が無い/逆効果となることも良くあるので注意が必要です。少なくとも、他人の気持ちがわかることを前提とした対策は厳禁です。見た目や口先だけで他人の内面を知ることは極めて困難ですし、本当にメンタルヘルス不調の場合は自尊感情が損なわれているケースが多くデリケートな対応が必要だからです。
ねぎらいのためや本音を聞き出したりするためにメンタルヘルス不調対策のつもりで半ば強引に飲み会に誘う、というのは日本の職場では見られがちですが、飲み会でストレスを感じるやりとりがされたり睡眠時間が削られたりして逆効果になる可能性があります。
職場で適切な対策を行うためには、上長にメンタルヘルスに関する正しい知識が必要です。

■会社全体でのメンタルヘルス対策の実施

メンタルヘルスは敏感で難しい分野ですので、職場での自助努力だけではなく、外部の専門家や社内の専門担当者、例えば、産業医や衛生管理者、保健師、人事・労務担当者が支援することも重要です。
全社的な施策や、長時間労働者へのヒアリング、職場でのメンタルケアのサポート、外部機関との連携等は、このようなポジションの人物でないと実施が難しいです。

■社外機関を用いたメンタルヘルス対策の実施

厚生労働省や中央労働災害防止協会、商工会議所、健康保険組合といった社外の機関もメンタルヘルス対策を推進しています。
具体的には、産業保健情報の提供、健康相談窓口の開設、アドバイザーや講師の個別訪問、といった活動に取り組んでいます。
社内だけではリソースやノウハウが足りない場合は、こういった社外機関によるサポートを得ることも重要でしょう。
下記のような助成金制度を利用することもできます。


いかがでしたでしょうか。

私はメンタルヘルスについて専門的な知識は持ち合わせていないので、このような重いテーマを投稿することには少し葛藤がありました。
しかし、IT業界とは切っても切れないテーマであり、またIT業界に関わる方々が知っておくべきテーマであるとも思ったため、投稿に至りました。

何かの参考になれば幸いです。

炎上プロジェクトへの人員追加のまずさと、正しい人員追加の方法

IT業界では、炎上プロジェクトへの人員追加は悪手とされ、遅れが更に拡大する結果になることが多いです。
(一般的には、スコープ見直しやスケジュール延伸が良い手とされます)

このことは「ブルックスの法則」として知られており、その法則では以下の理由により人員追加が悪手とされています。

1.新たに投入された人員を育成するのに時間がかかる

育成するまでの間、新たに投入された人員がプロジェクトへ貢献するのは難しく、逆に育成コストがかかってしまう。
スキル面で問題のない人員だとしてむ、システム固有の知識を得るのにある程度の時間はかかってしまう。

2.人員が増えるとコミュニケーションコストが増大する

人員が増えれば増える程、コミュニケーションに費やす労力が増えることになる。
そのため、人員とパフォーマンスは比例するわけではなく、人員の増加量に応じたパフォーマンスの増加量は徐々に低下する。
仮に、追加人員が全くパフォーマンスを発揮しない場合、コミュニケーションコストが増える分、全体のパフォーマンスはむしろ低下する。
(この問題は、組織を適切に分割することで、ある程度緩和される)

3.タスクの分割が難しい場合がある

労働集約的なタスクであれば、一般的に分割は容易である。
例えば、複数のソースコードの修正であれば、ソースコード毎にタスクを分割できる。
しかし、そうではないタスクは分割が難しい場合もあり、例えば、チーム間調整のタスクは分割が困難である。
タスクの分割ができない場合、新たに投入された人員にタスクを割り振ることができず、遊ばせてしまう。


しかし、人員追加は常に悪手ではありません。
1人でこなすことができるタスク量には限界があり、また人員が何らかの理由(体調不良や家庭の事情等)でパフォーマンスを発揮できなくなった場合のリスクヘッジも考える必要があるためです。
悪手なのはあくまでもプロジェクト炎上中に人員を追加することであり、人員は少なければ少ないほど良い、というわけではありません。

途中で人員を追加したくなるような炎上プロジェクトは、初めから人員を追加しておけば、問題は無かったはずです。
そのため、プロジェクトの計画時に適切な人員を確保することが重要になります。
人員を追加する際、追加する人員の人数やスキル、人員の育成計画、コミュニケーション計画、各人員のタスク、といったものも合わせて計画することが重要です。

仮に、計画時の見積もりが過小であったことが開発途中で分かったのであれば、炎上する前に計画を見直して人員を追加するのが望ましいです。
炎上する前であれば、人員追加が間に合う可能性があります。
炎上するまで放置すると人員追加が間に合わなくなってしまうので、炎上する気配が見えたらなるべく早く計画を見直すことが重要です。


いかがでしたでしょうか。

上記の通り、人員はプロジェクトが炎上する前に適切に追加する必要があります。
人員を追加せずにプロジェクトを炎上させるのも、炎上したプロジェクトに慌てて人員を投入するのも悪手です。

人員を適切なタイミングで適切な人数だけ追加するためには、プロジェクトが走る前の見積もりの段階で先を見通す必要があります。
リーダーになるとプロジェクトの見積もりをする機会も出てくるので、リーダーになる頃には先を見通せるだけの知識や経験を積み重ねておきたい所です。

東証ArrowHeadの事例から見るシステム利用者に向けた理想的な障害報告

少し古い事例ですが、2020年10月01日の東証ArrowHead障害の会見から、システム利用者に向けた理想的な障害報告を見て行きたいと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=Sokp32qOvyE
この会見は、障害報告のお手本と言える会見だと思います。

ビジネスを理解している者とシステムを理解している者を会見に同席させ、様々な観点の質問に的確に回答している点も素晴らしいですが、システム利用者に説明するべきことを冒頭で簡潔に報告していることも素晴らしいです。
この会見では以下の1~4のことが報告されており、これらのことは東証ArrowHead以外のシステムの障害発生時にも報告するべきことです。

システム利用者からすれば、1と2は現状を把握する上で必要な情報です。
また、今後の対応を行う上で、3も必要な情報です。
4は、サービス品質を保つ努力を示すために報告するべき情報です(もし障害対策に落ち度があれば、品質強化策や再発防止策を策定し、後日報告するのが望ましいです)。


【報告事項の概要】

1.障害の発生日時の報告

  • 2020/10/01の9時前(取引開始前)に、東証ArrowHeadの相場情報システムで障害発生。

2.意思決定も含めた障害対応の経緯と、利用者への影響

  • 原因は機器のハード障害である。
  • 障害により、株価等の相場情報を正常に配信することができなくなった。
  • システム全体の整合性を保つことを優先し、当日中の障害復旧は行わなかった。(復旧による二次障害を防ぐことを優先した)
  • 主要プレイヤー(証券会社等)からヒアリングを行った上で上記の決定となった。
  • 障害復旧を行わなかったことで、終日売買停止となった。
  • 障害発生当日は、市場は開いていたが全銘柄注文が付かなかった、という扱いとした。

3.今後の対応予定

  • ハードウェア交換作業を行い、翌日より通常通り取引可能な状態とすることとした。
  • 翌日の早朝(恐らく7時頃)、ホームページや広報を通してシステム状況を通知する。

4.障害対策を行ったのにも関わらずにユーザー影響に至った理由

  • 機器は多重化されており、フェールオーバー(機器切り替え)も想定されていた。
  • フェールオーバーのテストも事前に行っていた。
  • ハード障害は、自動でフェールオーバーすることができないという現象も起こした。
  • 手動でのフェールオーバーは可能であり、手順も用意されていた。(ただし、2にて前述した理由により、当日中のフェールオーバーは行わなかった)

いかがでしたでしょうか。

東証ArrowHead障害の会見については個人的にメモしていたのですが、今回はそのメモを一般的な知見として吸収できるようにブラッシュアップし、公開しました。
業界関係者であれば感動を覚えるような綺麗な会見なので、見たことがないという方は今からでも見ることをお勧めします。