型推論とは

型推論とは、メソッド内のローカル変数を初期値付きで(右辺がある状態で)宣言する際に、通常の型宣言の代わりに”var”という仮の型を使用できるという文法です。
“var”を用いた際は、コンパイル時に自動で型を判断し、その型への置き換えが行われます。

C#では3.0(2007/11)から導入されており、現在ではお馴染みの文法と言えるでしょう。
Javaでは長らく導入されていませんでしたが、10(2018/03)でついに導入されました。
今後はJavaの案件でも目にすることが増えると思います。

型推論を用いることで、冗長な型宣言をすっきりさせることができます。
C#の例で言うと、下記のコードで、定義時に”List”と型を指定している箇所は、”var”に書き変えることができます。

また、ソース修正で型を変えるような場合にも、”var”と記述した部分は変更する必要がなくなるので、ソース修正が楽になるというメリットもあります。


型はコンパイル時に決まるため、実行時に動的に型が変わることはありません。
例えば、下記のようなコードはコンパイルエラーになります。
((22,20): error CS0029: 型 ‘int’ を型 ‘System.Collections.Generic.List’ に暗黙的に変換できません。)
誤って意図しない型を代入しようとした場合はコンパイル時にエラーとして検知できるので、その意味では安心して使えます。

ちなみに、「型推論」と似た概念として「動的型付け」というものがあるのですが、こちらは途中で異なる型を代入すると変数の型そのものが変わり処理が続行されます。
例えば、JavaScriptでは動的型付けが採用されており、予約語も”var”を用いるため、「型推論」と混同されがちです。
「動的型付け」の方は誤って意図しない型を代入しても実行するまで気付くことができず、実行時に出るエラーが分かりにくいものだったり、そもそもエラーが出ないこともあるので、注意が必要です。


以上のように便利な型推論ですが、可読性を落とすデメリットもあります。
具体的に言うと、変数宣言時の型が一目瞭然ではない場合に用いると可読性を落とします。

例えば、下記のコードで変数宣言時の型を知るためには、”MyFunc”の仕様を知っている必要があります。
“MyFunc”のような独自の関数でなくても、チーム内での知名度が低い関数を用いる場合は注意が必要です。

また、”int”や”string”のような基本的な型に対して用いるのも、元々型宣言が冗長ではないという意味で型推論を使用するメリットが少ないので、他の開発者に違和感を抱かせてしまう可能性があります。


いかがでしたでしょうか?

「型推論」は便利ながらも、「動的型付け」のように実行時エラーを引き起こす原因を作ることはないので、安心して使える文法だと思います。
その使いやすさからJavaでも今後目にする機会が増えると思うので、このような文法があるということは頭に入れておいて損はないと思います。

Javaのバージョンは今でも上がり続けているので、新しい便利な文法があればこれからも紹介したいと思います!

スタック・キューの説明と使い所

データをメモリに一時的に保持する仕組みとして、スタックとキューがあります。
今回はスタックとキューについて、どのようなものなのかの説明と使い所を書いていきます。


スタックは先入れ後出し、キューは先入れ先出し方式でデータを保持します。
例えば、a,b,cの順番でデータを投入する場合、スタックはc,b,a、キューはa,b,cの順番でデータが取りだされます。
なお、スタックにデータを入れる操作はプッシュ、スタックからデータを取り出す操作はポップ、キューにデータを入れる操作はエンキュー、キューからデータを取り出す操作はデキューと呼びます。
以下、イメージ図です。

・スタック

・キュー


スタックが使われる代表的な場面としては、関数呼び出し時に戻り先を保持する場面が挙げられます。
例えば、以下のような構造になっている場合

関数g()が呼び出された時点でスタックに①のアドレス、関数h()が呼び出された時点でスタックに②のアドレスが戻り先として保持されます。
そして、関数h()が終了した時点でスタックから戻り先として②のアドレスが取り出され、関数g()が終了した時点でスタックから戻り先として①のアドレスが取り出されます。

余談ですが、以下のように再帰呼び出しになっている時は注意が必要です。
ループ終了条件を満たさないまま大量の再帰呼び出しを行った場合、戻り先アドレスのサイズがスタックのサイズを超えてしまい、プログラムが異常終了してしまいます。


キューが使われる代表的な場面としては、マルチスレッドの制御を行う場面が挙げられます。
1つのスレッドの処理が「①軽い処理→②重い処理」となっており、かつ①の処理を先に行ったスレッドが②の処理を先に行う必要がある場合、①と②の間にキューを入れて対応します。
①の処理は処理が終わるごとにキューの中にスレッドのオブジェクトを格納し、②の処理は処理が終わる毎にキューの中のスレッドのオブジェクトを取り出し次の処理に移ることで、①の処理と②の処理の速度差を吸収することができます。


いかがでしたでしょうか?

スタックやキューはITパスポートにも出題される基礎的な概念ですが、実際にプログラミングで意識する場面は少ないと思います。
今回の記事では、実際のプログラミングではどのような場面で意識するのかも参考のため書いてみました。

C#:await・asyncの簡単なサンプルコード

C#のawait・asyncは非同期処理のために用意された文法なのですが、Webで調べてみても難しく書かれていることが多く、そもそも何のための処理なのか理解するのが難しい感があります。
await・asyncを用いて関数を呼び出しても、その関数の処理が終わるまで待つという動きをするので、同期処理と何が違うのかいまいちわかりにくいというのもあると思います。
以上のような背景があるので、簡単なサンプルコードを書いてみることとしました。

await・asyncは、GUIアプリのために用意された文法と考えて良いです。
await・asyncを用いない場合、処理中はGUI操作ができなくなるのですが、await・asyncを用いて呼び出した関数を処理している間はGUI操作が可能になります。
GUI操作と並行で処理ができる、という意味で、await・asyncは非同期処理であると言えます。

以下、Windows Formのサンプルコードです。
3秒後にボタン押下時のシステム時刻をラベルに表示するというサンプルコードであり、await・asyncを用いたボタンとそうではないボタンを用意して挙動の違いを確認します。

【サンプルコード】

・From1.cs(デザイン)

・Form1.cs(ビジネスロジック)

【実行結果】

・Asyncボタンを押してから1秒以内にNoAsyncボタンを押下

→Asyncボタンの処理中もNoAsyncボタンを押下可能であるため、2つのボタンに対応するラベルの表示上、時刻の差異は1秒以内です。

・NoAsyncボタンを押してから1秒以内にAsyncボタンを押下

→NoAsyncボタンの処理中はAsyncボタンを押下不可能であるため、2つのボタンに対応するラベルの表示上、時刻の差異は3秒以上となります。


いかがでしたでしょうか。

説明を読んでも関数の挙動や目的がわからなかったのですが、自分で簡単なプログラムを作って動かしてみて理解できました。
今回の記事はC#でGUIのプログラムを作っている人以外には参考にならない記事だったかもしれませんが、簡単なプログラムを作って理解を深める例を示すことはできたのではないかと思っています。

Windows環境でツールを入れずにMySQLのUTF-8の日本語項目を操作する

Windows環境でMySQLを使う場合、UTF-8の日本語項目の操作が難しいです。
というのも、コマンドプロンプトでMySQLを操作する場合、chcpコマンドでコードをUTF-8(65001)に設定してしまうと日本語が扱えなくなってしまうためです。
(コマンドプロンプトでUTF-8に設定した場合、レジストリで設定変更しない限り日本語のフォントを使えなくなってしまう。日本語を入力することができず、出力時も文字化けする。)

ツールを入れればこの問題は解消するのですが、ツールを入れるのが面倒な場合は、UTF-8で書かれたテキストファイル(.sql)とバッチファイル(.bat)を組み合わせることで日本語項目を操作することができます。
以下、日本語項目をinsert・selectする例です。mysql.exeへのパスは通っているものとします。

【前提】

・データベースのユーザとパスワード

ユーザ  :root
パスワード:root

・データベース名(スキーマ名)

sample

・対象テーブル(DDL)

【insertする例】

・Insert.sql

・Insert.bat

・バッチファイルをダブルクリックした結果

userテーブルにデータが挿入される。日本語項目も正しく挿入される。
(後のselect結果で確認する)

【selectする例】

・Select.sql

・Select.bat

・バッチファイルをダブルクリックした結果

C:\tmp\hoge.txt に下記のように出力される。
(出力ファイルはtab区切り・改行コード\n)


いかがでしたでしょうか。

自宅PCで立てた環境での話を記事化したものですが、まさかコマンドプロンプトでUTF-8の日本語のフォントが扱えないとは思いませんでした。
Windows環境なのであれば、初めからShift-JISで実装した方が楽かもしれません。

C#:セマフォを用いた排他制御

排他制御の仕組みとして先日Mutexを取り上げました
今回は、同じく排他制御で使われるセマフォについて取り上げます。

セマフォがMutexと異なる点は、複数のプロセス・スレッドが資源を取得することができることです。
セマフォのコンストラクタで初期で解放する資源数や、解放できる資源の最大数を指定します。
WaitOne関数で資源取得待ちを行い、Release関数で資源解放を行います。Release関数の引数で資源解放数を指定することもできます。
(ただし、最大数を超える資源を開放するとSemaphoreFullExceptionとなるので注意が必要です)

セマフォは、同時に動くスレッド数を制限したいような重い処理がある時によく使われます。

以下は、セマフォを用いて同時に動くスレッド数を制限するサンプルです。

【サンプルコード】

・Controller.cs

・Processor.cs

【実行用バッチ】

・test.bat

【実行結果】

・test.bat

・Controller.exe

・Processor.exe


いかがでしたでしょうか?

排他制御の仕組みとしてMutexを説明したので、ついでに代表的な方法の一つであるセマフォについても説明しました。
Mutexよりも使用頻度は少ないと思いますが、同時に動くスレッド数を制限するための書き方があるというのは覚えておいて損はないと思います。