今回は、バッチプログラムで使われるロジックの一つである「マッチング処理」について説明します。
「マッチング処理」とは特にCOBOLではよく目にするロジックであり、マスタデータ(業務の基盤となるデータ。商品一覧、取引先一覧等。)とトランザクションデータ(業務で日々発生するデータ。販売履歴、入金履歴等。)を突き合わせる処理です。
マッチング処理を覚えておけば、実業務でバッチプログラムを作る時のヒントになりますし、開発者同士のコミュニケーションもスムーズになります。
突き合わせを行う時は、マスタデータとトランザクションデータで同じキー項目(商品コード、取引先コード等)を使用し、そのキー項目で昇順にソートした後、マスタデータとトランザクションデータを1件ずつ読み、キー項目が一致するかどうかで突き合わせを行います。
マスタデータとトランザクションデータでキー項目が一致した場合(マスタで管理しているもので取引が発生した)と、マスタのみキー項目が存在している場合(マスタで管理しているが取引は発生しなかった)は正常ケースですが、トランザクションのみキー項目が存在している場合(マスタで管理していないものが取引された)は異常ケースとなります。
マスタデータの一つのキー項目に対して、トランザクションデータの0~1つのレコードが対応する場合は、1対1マッチングと呼ばれます。2つ以上のレコードが対応することがある場合は1対nマッチングと呼ばれ、処理が少しだけ複雑になります。
フローチャートと例は以下の通りとなります。
【フローチャート】
【例】
・要件
商品名が管理されている商品マスタと、商品の販売履歴(トランザクション)をファイル形式で読み込み、商品名と販売日を別ファイルで出力したい。
・商品マスタのフォーマット
カンマ区切りの固定長ファイル。
商品コードでレコードを一意に特定できるようにデータをセットする。
1 2 3 |
商品コード(7桁) カンマ(1桁) 商品名(20桁) |
・販売履歴のフォーマット
カンマ区切りの固定長ファイル。
商品コード・販売日でレコードを一意に特定できるようにデータをセットする。
1 2 3 4 5 6 7 |
商品コード(7桁) カンマ(1桁) 販売日(8桁) カンマ(1桁) 販売個数(5桁) カンマ(1桁) 販売金額(9桁) |
・出力ファイルのフォーマット
1 2 3 |
商品名(20桁) カンマ(1桁) 販売日(8桁) |
・商品マスタのレコード
1 2 3 |
0000001,hoge 0000002,fuga 0000004,piyo |
・販売履歴のレコード
1 2 3 4 |
0000001,20180401,00100,00010000 0000001,20180402,00200,00020000 0000003,20180401,00001,00001000 0000004,20180401,00002,00002000 |
・処理の流れ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 |
①商品マスタ1レコード目と販売履歴1レコード目を読みこむ ②キー項目がマスタ(0000001)=トラン(0000001)のため、マッチ時処理実行 出力ファイルを1レコード出力する ③販売履歴2レコード目を読みこむ ④キー項目がマスタ(0000001)=トラン(0000001)のため、マッチ時処理続行 出力ファイルを1レコード出力する ⑤販売履歴3レコード目を読みこむ ⑥キー項目がマスタ(0000001)<トラン(0000003)のため、マッチ時処理終了 ⑦商品マスタ2レコード目を読みこむ ⑧キー項目がマスタ(0000002)<トラン(0000003)のため、マスタのみ処理実行 何もしない ⑨商品マスタ3レコード目を読みこむ ⑩キー項目がマスタ(0000004)>トラン(0000003)のため、トランのみ処理実行 エラー出力 ⑪販売履歴4レコード目を読みこむ ⑫キー項目がマスタ(0000004)=トラン(0000004)のため、マッチ時処理実行 出力ファイルを1レコード出力する ⑬販売履歴EOFを読み込む ⑭キー項目がマスタ(0000004)<トラン(最大値)のため、マッチ時処理終了 ⑮商品マスタEOFを読みこむ ⑯マスタもトランもEOFになったため処理終了 |
・出力ファイル
1 2 3 |
hoge ,20180401 hoge ,20180402 piyo ,20180401 |
以上、「マッチング処理」でした。
少し複雑なロジックですが、ファイルをキーの昇順に並べて順番に読み込むことと、キーがマッチする場合・しない場合は具体的にどのような状況なのかをイメージすることがポイントになります。
次回は、サンプルプログラムを書いてより具体的に説明したいと思います。
では、また来週!
コメント
キー項目がマスタ(0000004)<トラン(最大値)の最大値とは何ですか?具体的にこの場合何が入っているのでしょうか?それとマスタが0000006の場合符号は変わりますか?
ご質問ありがとうございます。
> キー項目がマスタ(0000004)<トラン(最大値)の最大値とは何ですか?具体的にこの場合何が入っているのでしょうか?それとマスタが0000006の場合符号は変わりますか?
「最大値」とは、COBOLの場合は「HIGH-VALUE」を指します。
16進数で言うと、0000004 は 0x30303030303004 となり、HIGH-VALUE は 0xFFFFFFFFFFFFFF となります。
ここで、マスタが 0000006 だとしても符号は変わりません。数値の場合は最大でも 9999999(0x39393939393939)なので、HIGH-VALUE以上の値になることはありません。